「キートンの大列車追跡」を観る2023年01月30日 20:54

 「キートンの大列車追跡」を観る。原題は「The General」、かつては「キートン将軍」「キートンの大列車強盗」とも。「キートン将軍」は明らかに誤訳。「The General」は機関車の名前。「大列車強盗」は当たらずとも遠からず。1926年アメリカ映画。もちろんモノクロ・サイレント。監督はバスター・キートン(マスター・キートンではない。こちらのほうが本家)。

 南北戦争開戦直後。南部の男たちはこぞって軍に志願。キートン扮するジョニー・グレイも志願するが、機関士は重要な仕事なので志願登録を拒否される。拒否の理由が本人も含め誰にも教えられなかったため、グレイは周囲からも面汚しとなじられ、恋人のアナベルからも振られてしまい、さんざんな目にあってしまう。

 それから1年後、寂しく機関士として働くグレイは、北軍のスパイに自分が登場する機関車「The General」を乗っ取られてしまう。機関車奪回のために必死なグレイだが、乗っ取られた機関車が引く貨車には恋人アナベルが囚われていた…

 スラップスティックギャグのお手本のような作品。驚くべきことは、当時の技術から考えれば、機関車は本物でなければならないということだ。速度の遅い時代とはいえ、アクションは文字通り命がけ。ラストには鉄橋もろとも列車が川に転落というシーンもあるが、当然これも実際に橋を崩落させ、列車を落としているとしか考えられない。気合の入れっぷりは桁違い。

 ヒロインのアナベルを演じたマリオン・マックがキュート。だからといって甘い扱いは一切なし。大量の水はぶっかけるわ、グレイが機関車の釜炊きに彼女をこき使うわ、遠慮会釈ない。敵に追われる最中に男も女もないというのもリアルだが、そんな中でもアナベルのちょっとはずれたところがおかしい。

 気合の入りまくったサイレント・コメディ。このあとに続くコメディアンのルーツとも言えるが、命がけを履き違えた笑えないコメディが増えたのは皮肉だろうか。

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