貧しい社会2023年03月12日 19:45

 消費税が最初に導入されてから今日まで、この国の手取り所得は実は減少の一途なのだという。

 本を読む人間が減ったのは、ネットが読書を侵食したのではなく、単に本が買えなくなったからだという。これには同感だ。本の価格も上がり、手取り収入も下がるとなれば、買いたくても買えない。図書館などという抜けたことを言わないでほしい。図書館には一種類一冊しか本がない。読みたいときに読めるという保証はない。ベストセラーとなればなおさら。やっと順番が回った頃にはもう旬が過ぎているなんていうことも珍しくない。

 TVはといえば、たいして面白くもないダベリ番組が目白押し、クイズ番組では芸人と称する連中がわざとバカバカしい解答をして苛立つことこの上ない。景気がいいときにはそれなりの文化への渇望もあったが、「サルでもわかる」などと銘打った怪しげな解説が跋扈して、いつの間にやら文化を敬遠する風潮まで現れる。これでは「上見て暮らすな、下見て暮らせ」だ。

 貧しさを自覚し、それを克服しようとするのが豊かな社会の基本だろう。いまや、その貧しささえ自覚しない、させない仕掛けが世の中至るところにある。古代ローマで大衆を手懐けるには「パンとサーカス(昔は見世物と言っていた)」が重視されたが、今、大衆に最も身近な文化発信装置であるTVは「グルメとスポーツ(またはゴシップ)」を垂れ流している。