書店が消えていく…2023年03月29日 21:40

 書店ゼロの自治体が全国の1/4を超えているという。

 書店が自民党に泣きついて、ネット書店への送料無料を規制するよう要望したという。まあ、アマゾンのことが念頭にあるのだろう。

 だが、考えてもらいたいものだ。まず、地方の書店には読みたい本がかなりの確率で入ってこない。入荷しない。書店員も本の知識が乏しいことが多く、注文を頼んでも怪しかったり、空耳ででたらめな書名を発注して事故便にしたりなどということは少なくなかった。もちろん、注文しても日数がかかる。本は足が早い商品のうちに含まれるから、読みたいときを逃すと辛いということを、体感的に理解している書店員も多いとは言えない。本好きの理屈で営業されても一般の客は本好きとは限らないということがわかっていない。

 新聞等の書評に取り上げられた本も地方書店の店頭には並ばないことが多い。特に毎日新聞の書評に取り上げられる本は(数も多いのだろうが)まず地方では絶望的に店頭に並ばない。

 営業的に苦しいのはわかるが、売れ筋の本だけを並べられても、魅力は感じられない。ジャンクフードのような本ばかり並べられてもげんなりする。おまけに賞味期限も長くないとくれば…

 たまに欲しいが高額で手が出ない、いつか必ず買おうと書店に行くたびに背表紙を眺めていた本があっても、懐があたたまるころにはすでに返品されている。そういう「返品してほしくない本」を察知する店も地方には少ない。昭和の時代のおもちゃ屋のプラモ売り場の一番上、手の届かないところに鎮座していた1万円の「大和」のプラモではないが、高くて買えないけれど、憧れる本というものは、本屋の隠れた看板ではないのだろうか。

 最近は某大手問屋が経営を引き継ぐ書店も現れているが、あまり感心しない。こういう書店は本を「売るための商品」としてしか見ていない。自分たちの売りたい本を並べるのだが、客が読みたい本や新刊をきちんと並べるという気が感じられないし、新刊なのに全く店頭に並ばない本も少なくない。問屋がこんな選書をするようでは、末端の地方書店も苦しかろう。

 読みたい本が置いていない。注文しても信頼性が低い。長く待たされる。新刊がいつまでも入らない。いまだに地方によっては発売日に店頭に書籍や雑誌が並ばない。店員が本の知識を持ち合わせていない。有り体に言えば、書店とそれを取り巻く側の努力不足が書店が消えていく原因なのではないか。

 地方の小さな書店でもキラリと光る品揃えや、話の通じる店員のいる書店もある。そういう書店には固定客がきちんといて、店舗の規模さえ間違えなければ経営できている。そういう書店員がかつて私に何冊も本を勧めてくれたが、一冊もハズレがなかった。アマゾンよりオススメの勝率は高い。

 政治家に泣きつく前に、全国どこでも発売日には一斉に店舗に本が並ぶシステムを構築すること。せめて全国紙の書評欄に並ぶ本は書店の店頭に可及的速やかに並べること。書店員の(チーム力で構わないので)本の知識を高めること。取次問屋の長年に渡る怠慢こそが書店減少の元凶ではないのか。アマゾンを筆頭とする電子書店が強いのは、怠慢な取次問屋を排除したからであって、別にズルをしたわけではない。この国の書店取次問屋はほぼ2社で寡占状態。健全な状態とはお世辞にも言えない。ブラックな噂(地方小規模書店いじめのような内容)を地方の個人書店の店主が告発したエッセイもあるぐらいだ。

 商品のない店に客は行かない。当たり前ではないか。そんな店が政治家に泣きつくなど、滑稽極まりない。電子書店を締め上げたところで、本のない本屋に客が帰るはずはない。