デジタル人材の育成2023年03月26日 16:50

 デジタル人材が足りない。

 そこで学校での科目を作ったり、増やしたり、大学への進学者を増やそうとしたり。

 賽の河原の石積みさながらだ。土台のない石積みはあっという間に鬼に壊されてしまう。

 近視眼的に「役に立つ(=使える=儲けが出る)」人材を、手っ取り早く(=早く=安く)作りたいというしみったれ根性が透けて見える。貧困な育成ポリシーには貧困な成果しか現れない。

 情報という科目が生まれて、高校生のコンピュータオタクの数は減った。反体制(=アンチ学校教育)的遊びだったコンピュータが体制側の教育になったのだから、意欲のある(=反骨精神がある=悪知恵がきく=頭を使う)学生が減るのは当然。

 ロボコンで生徒を釣ったら、ロボコン以外の学習にはまったく興味を示さない学生が増えて、かえって人材育成に支障が出た。基本的な情報工学の知識も、物理学の学習も知らんぷり。当然だろう。遊びで生徒を募集すれば、遊びしかしたくない生徒が集まるのは理の当然。それで学校教育が成り立とうはずもない。

 まずは裾野を広げること。世界を制覇した日本のサブカルは、遊びと反体制(教育ママと呼ばれる連中には死ぬほど毛嫌いされ、オタクと世間から異端視され、くだらない、幼稚だと嘲笑されていた)の中から醸成され、その素地の上に立って20〜30年以上の時間をかけて世界に浸透したのだ(手塚、トキワ荘を嚆矢とすれば、80年代で30年)。

 デジタル人材がほしければ、そろばん勘定度外視の遊び環境(=基礎研究環境)を整備し、30年スパンでの熟成が必要だ。当座は促成栽培的人材育成でしのいでも、この熟成環境が保証されない限り、必ず人材はジリ貧となる。

 まるでノーベル賞受賞者が語る苦言のようだ。