「裏切りのサーカス」を観る ― 2018年08月08日 23:47
「裏切りのサーカス」を観る。
サーカスと言っても、テントの中で曲芸をする、あのサーカスではない。この作品の中に登場する英国諜報部の本部の呼称。このタイトルはある意味内容をよく表しているのだが、小説好きならオリジナルタイトル、つまり原作小説のタイトルのほうが分かりやすかったかもしれない。「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」。そう、ジョン・ル・カレの名作だ。
スパイの物語だが、至ってリアル。アクションがあるわけでもなく、美女を侍らすセクシーなスパイが登場するわけでもなく、世界征服を企む悪の組織やら超兵器やらが登場するなど、かけらもない。渋い男たちの、胃が痛くなるような諜報戦だ。
さらに、この映画、観客も選ぶ。黙って口を開けて、じっとおいしい餌を待っているだけの、ヒヨドリタイプの観客は、この映画を見ても退屈する上に、全く理解不能だと怒りだすだろう。手取り足取り、上げ膳据え膳の昨今のハリウッド映画とは正反対、寡黙に、切り詰めて進むストーリーは密度が濃い。こちらが行間を補い、細部にまで注意しながら見ていく必要がある。観客と映画とが対話的関係を持たない限り、この作品を楽しむのは難しい。敷居が高いのだ。
だが、高い敷居を登ると、この作品の真価が見えてくる。キャストもすごい。ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・ハートなどなど、イギリスを代表する名優がずらりと並ぶ。
70年代、冷戦まっただ中の東西諜報戦、英国諜報部の、というより、英国の誇りとその凋落、権力闘争、幾重にも張り巡らされた策謀、そしてスパイたちの悲哀、これらが淡々としたタッチでしみじみと伝わってくる。この映画を長いと感じるか、短いと感じるかは、観る側のスタンスに大きく依存する。これほど緊張感を持ってラストまで引っ張られる映画も珍しい。
親切な映画ではない。一見ぶっきらぼうで不親切な映画のようにも見える。だが、最新の注意と設計で作り上げられた作品であることにまちがいはない。映画と真正面からぶつかり合う、そんなひとときが楽しめる。
サーカスと言っても、テントの中で曲芸をする、あのサーカスではない。この作品の中に登場する英国諜報部の本部の呼称。このタイトルはある意味内容をよく表しているのだが、小説好きならオリジナルタイトル、つまり原作小説のタイトルのほうが分かりやすかったかもしれない。「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」。そう、ジョン・ル・カレの名作だ。
スパイの物語だが、至ってリアル。アクションがあるわけでもなく、美女を侍らすセクシーなスパイが登場するわけでもなく、世界征服を企む悪の組織やら超兵器やらが登場するなど、かけらもない。渋い男たちの、胃が痛くなるような諜報戦だ。
さらに、この映画、観客も選ぶ。黙って口を開けて、じっとおいしい餌を待っているだけの、ヒヨドリタイプの観客は、この映画を見ても退屈する上に、全く理解不能だと怒りだすだろう。手取り足取り、上げ膳据え膳の昨今のハリウッド映画とは正反対、寡黙に、切り詰めて進むストーリーは密度が濃い。こちらが行間を補い、細部にまで注意しながら見ていく必要がある。観客と映画とが対話的関係を持たない限り、この作品を楽しむのは難しい。敷居が高いのだ。
だが、高い敷居を登ると、この作品の真価が見えてくる。キャストもすごい。ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・ハートなどなど、イギリスを代表する名優がずらりと並ぶ。
70年代、冷戦まっただ中の東西諜報戦、英国諜報部の、というより、英国の誇りとその凋落、権力闘争、幾重にも張り巡らされた策謀、そしてスパイたちの悲哀、これらが淡々としたタッチでしみじみと伝わってくる。この映画を長いと感じるか、短いと感じるかは、観る側のスタンスに大きく依存する。これほど緊張感を持ってラストまで引っ張られる映画も珍しい。
親切な映画ではない。一見ぶっきらぼうで不親切な映画のようにも見える。だが、最新の注意と設計で作り上げられた作品であることにまちがいはない。映画と真正面からぶつかり合う、そんなひとときが楽しめる。
スポーツ絡みの不祥事 ― 2018年08月09日 23:08
スポーツ絡みの不祥事が相次いでいる。
自分の行為がどのようなものか、満足に認識できない(明確な支持をしているのにしていないと強弁し、証拠をつきつけられるとそんなつもりはなかったとありえない言い訳を重ねる)。自分の地位や過去の実績、身体的ないしは年齢的威圧による上下関係を根拠にした完全支配と隷属を基本とする人間関係の強要(いわゆるパワハラ、性的な性格がつけ加わればセクハラ)、そのような人間関係が敷衍できるという甘い認識から生まれる強弁、責任転嫁、開き直り。自分の支配が及ばないことに対する幼児的激怒と、不正行為による恣意的支配の具現化。自己の権力誇示とその確証を求めるための必要以上の接待・待遇の有形・無形にかかわらぬ強要(平易な言い方ではこれをゆすり・たかりという)。自己の対面が毀損されることに対する過敏なまでの怒りと、半理性的及び半道徳的言動。傲岸不遜な言動。公衆の面前及び不特定多数に公開されることが明白な場での、礼を失した反対論者への罵倒(マスコミのインタビューで大声で「アホ」と罵倒語を連呼するなど)。誤ったダンディズムに陶酔した幼児的言動(やたら男を強調するが、明らかにダンディズムから逸脱した幼児的自己陶酔)。説明能力の圧倒的な欠落(弁解すら満足にできない)。
今日に至っては、同じような精神構造でパワハラに及んだ女性まで出現。このような困ったところまで男女同権であったことも判明。
スポーツは、社会において恣意的言動を容認する特権を付与する免罪符のようなものなのだろう。ここまでくれば、スポーツという社会的活動に内包された構造的問題と言わざるを得ないのではないか。
そう言えば、これら困った御仁たちの性質は、どこか馴染みのあるものの様な気がする。かつての日本映画でよくお目にかかったキャラクターだ。高倉健が主演するような昔の映画によく出てきた。健さんが「お勤め」している間にのしてくる連中。健さんが「お勤め」を終えて、その存在にじっと耐えているが、最後には…
健さんが鬼籍に入って4年。はびこってくる頃ではある。
自分の行為がどのようなものか、満足に認識できない(明確な支持をしているのにしていないと強弁し、証拠をつきつけられるとそんなつもりはなかったとありえない言い訳を重ねる)。自分の地位や過去の実績、身体的ないしは年齢的威圧による上下関係を根拠にした完全支配と隷属を基本とする人間関係の強要(いわゆるパワハラ、性的な性格がつけ加わればセクハラ)、そのような人間関係が敷衍できるという甘い認識から生まれる強弁、責任転嫁、開き直り。自分の支配が及ばないことに対する幼児的激怒と、不正行為による恣意的支配の具現化。自己の権力誇示とその確証を求めるための必要以上の接待・待遇の有形・無形にかかわらぬ強要(平易な言い方ではこれをゆすり・たかりという)。自己の対面が毀損されることに対する過敏なまでの怒りと、半理性的及び半道徳的言動。傲岸不遜な言動。公衆の面前及び不特定多数に公開されることが明白な場での、礼を失した反対論者への罵倒(マスコミのインタビューで大声で「アホ」と罵倒語を連呼するなど)。誤ったダンディズムに陶酔した幼児的言動(やたら男を強調するが、明らかにダンディズムから逸脱した幼児的自己陶酔)。説明能力の圧倒的な欠落(弁解すら満足にできない)。
今日に至っては、同じような精神構造でパワハラに及んだ女性まで出現。このような困ったところまで男女同権であったことも判明。
スポーツは、社会において恣意的言動を容認する特権を付与する免罪符のようなものなのだろう。ここまでくれば、スポーツという社会的活動に内包された構造的問題と言わざるを得ないのではないか。
そう言えば、これら困った御仁たちの性質は、どこか馴染みのあるものの様な気がする。かつての日本映画でよくお目にかかったキャラクターだ。高倉健が主演するような昔の映画によく出てきた。健さんが「お勤め」している間にのしてくる連中。健さんが「お勤め」を終えて、その存在にじっと耐えているが、最後には…
健さんが鬼籍に入って4年。はびこってくる頃ではある。
空の事故 ― 2018年08月11日 23:28
日本で、そして海外で、空の事故が相次いで起きている。
空の乗り物は最も安全と言われるが、一度事故が起きると非情に危険なものでもある。
もはや空の旅はなくてはならないものになっている。だからこそ、このような事故は痛ましい。
空の乗り物は最も安全と言われるが、一度事故が起きると非情に危険なものでもある。
もはや空の旅はなくてはならないものになっている。だからこそ、このような事故は痛ましい。
帰省ラッシュ ― 2018年08月12日 22:47
帰省ラッシュたけなわ。
所要ででかけたが、結構渋滞していた。たまたま渋滞の列と反対車線だったので、巻き込まれることはなかったが、延々と続く車の列におどろくばかり。
所要ででかけたが、結構渋滞していた。たまたま渋滞の列と反対車線だったので、巻き込まれることはなかったが、延々と続く車の列におどろくばかり。
「SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと」読了 ― 2018年08月13日 22:45
チャールズ・ユウ著、円城塔訳「SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと」を読了。
「オマル」2冊が上下2段組の大作だったのに比べ、こちらは1段組で300ページ程度と、物理的には軽かったが、内容はかなり歯ごたえのあるものだった。
引きこもり系のタイムマシン修理人の主人公の日々の暮らしが、冒頭から語られていく。大きな事件が起きるわけでもなく、下町人情的な話があったりと、ゆったりとしたペースで前半の殆どが費やされる。
それが大きく変わるのが、主人公がタイムトラベルでは最大のタブーとされる、過去または未来の自分自身と遭遇してしまうところからだ。おまけに主人公はとっさにもう一人の自分を銃で撃ってしまう。撃ってしまったもう一人の自分から手渡された、全ての事件の解決が書かれている本、それが「SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと」という本である。
以降は主人公の内面的過去へと話が移っていく。行方不明の父との回想を通じて、タイムマシンが世にでるまでの秘史が語られ、父と自分の語り直しが始まる。もうこの辺は娯楽としてのSF小説からも逸脱し、純文学と俗に呼ばれている作品とSFとの混合がおこなわれている。
翻訳は円城塔。適材適所とはこのことだ。
「オマル」2冊が上下2段組の大作だったのに比べ、こちらは1段組で300ページ程度と、物理的には軽かったが、内容はかなり歯ごたえのあるものだった。
引きこもり系のタイムマシン修理人の主人公の日々の暮らしが、冒頭から語られていく。大きな事件が起きるわけでもなく、下町人情的な話があったりと、ゆったりとしたペースで前半の殆どが費やされる。
それが大きく変わるのが、主人公がタイムトラベルでは最大のタブーとされる、過去または未来の自分自身と遭遇してしまうところからだ。おまけに主人公はとっさにもう一人の自分を銃で撃ってしまう。撃ってしまったもう一人の自分から手渡された、全ての事件の解決が書かれている本、それが「SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと」という本である。
以降は主人公の内面的過去へと話が移っていく。行方不明の父との回想を通じて、タイムマシンが世にでるまでの秘史が語られ、父と自分の語り直しが始まる。もうこの辺は娯楽としてのSF小説からも逸脱し、純文学と俗に呼ばれている作品とSFとの混合がおこなわれている。
翻訳は円城塔。適材適所とはこのことだ。
最近のコメント