「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」を観る2020年04月11日 22:31

 「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」を観る。

 以前からずっと気になっていた映画。地方のシネコンではまず観ること能わず。レンタルショップも激減している昨今、amazonへの依存率は高まる一方。

 デヴィッド・ボウイのポートレイト、マーク・ボランのポートレイト、イギー・ポップのポートレイト、YMOの「ソリッドステート・サバイバー」のジャケットと、鋤田正義の名前を知らなくても、その作品は目にし、深く印象付けられている。その一つ一つを再確認しながら、多くのアーティストたちが鋤田にまつわるエピソードや考えを語るドキュメンタリー。

 衝撃的なのは、少年時代の鋤田が撮った、祭りの浴衣に笠をまとった母のポートレイト。笠で顔が隠れた横顔でありながら、母親への愛情や女性への憧れ、敬意のようなものまでが画面から溢れ出すような一枚。ボウイの「The Next Day」は、「heros」の鋤田が撮影したジャケット写真の顔の部分を大胆に白い正方形で抜き取ったものだったが、他ならぬ鋤田の写真以外ではこのような画面ができないとデザイナーが語るシーンがある。ポートレイトの核心は顔のはずだた、鋤田のポートレイトはこの少年時代の一枚からすでに、その核心であるはずの「顔」がなくても成立してしまう魅力と力にあふれている。

 なぜ彼にこのような稀有なポートレイトが撮れるのか。多くの人が彼の観察眼の確かさを語るが、その根本にあるのが被写体に対する深い愛情に根ざしていることは間違いがないだろう。

 年代を超え、文化や土地を超え、ジャンルを超える力の源は、あふれる好奇心とその根底にある他者への愛情ではないか、そんなことを、声高ではなく、しみじみと考えさせられる映画だった。

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